初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~

 
実結先輩が絡んでいるときは、という一例を除いてではあるものの、百井くんは常に言葉足らずなところがあり、それをわたしは彼とのつき合いの中で言葉を補い会話を成り立たせてきた。

最近では、百井くんくらい少ない言葉数で話してもらったほうが逆に調子がいいくらいだ。

けれど、今の発言はさすがに補いきれないし、なんといっても意味がわからない。

それに、わたしの家、百ノ瀬写真館……。


「ニナ、帰るぞ」

「え、えぇぇぇぇ……っ‼」


という間に、わたしの腕をむんずと掴んだ百井くんは、その力でもって強引にわたしを引っ張り美術室から出させると、そのまま片手で器用に鍵を閉めた。

当然、なにがなんだかわからないわたしは、華奢なくせにやたらと大きい百井くんの手の感触を腕に感じながら、捕らわれた宇宙人みたくその様子を眺めるだけだ。


その間にも、百井くんは着々と戸締りを続ける。

鍵を鍵穴から引き抜き、最後に戸を引いてしっかりと施錠されていることを確認すると、彼はまたわたしを引っ張って廊下をずんずん歩きだす。

半ば引きずられるような格好ながらも、ちらりと百井くんの表情をうかがうと、今までに見たことがないくらい活気に満ち満ちていて、軽く恐怖が走る。