初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~

 
筋金入りの写真バカだと思っていたけれど、こんな部分でもバカだったなんて……。

あの人の娘で死ぬほど恥ずかしい。


「俺らの卒業式、楽しみだな」


そんな中、わたしを痛めつけてひととおり満足したのだろう、去り際にその男子は言った。

わたしの肩に片手を置き、耳に口元を近づけて囁くように。

そして、やたらと意味ありげに。

その様子は、ともすれば甘い台詞を囁かれているふうに見えなくもなかっただろう。

だけど、内容が内容だけに、意味はまったく違う。


「……だ、誰にも言わないで‼」


やっと声が出るようになり、急いで背中に懇願すれば、しかし彼はうしろ手でヒラヒラと手を振るだけで、なけなしの頼みを聞き入れてくれたかどうかは、その背中から判断するのは難しかった。

でも、なにも言わないよりは幾分気も紛れる。

地獄でしかなかった時間からようやく解放されたわたしは、よろよろとした足取りで自分の席につくと、それでも一応、ほっと胸を撫で下ろした。

今日だけ……今だけの恥だと思えば、人をバカにしたような意地悪い顔もそのうち忘れられそうだ。