初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~

 
しかし、男子の話にはまだ続きがあった。

小バカにしたような意地の悪い笑みを浮かべて、彼はさらにわたしを追い詰める。


「お前の親父、緊張を解くために冗談を言って笑いを取るらしいじゃん? だけど、昨日のはマジで笑えない冗談だったって。……聞きたいか? 聞きたいよな?」


聞きたいわけあるか! バカ!

喉まで出かかっているその台詞が、しかしどうしても声になって出てくれない。

すると、なぶり殺しのようなそれに唇をワナワナと震わせるだけのわたしを見て、また意地の悪い笑みを浮かべた男子は、勝手に「そうかそうか、そんなに聞きたいか」と無言を肯定の意味に捉え、妙に鼻につく芝居がかった調子でこう言うのだ。


「――いいですか、みなさん。アナログカメラで写真を撮るときは、レンズカバーを外したか、撮る前にもう一度確認してくださいね! じゃないと、真っ黒写真になっちゃいますよー!」


アホか! それやったのアンタだよ!

わたしのツッコミは、けれど当然、声にならない。

それにしても、真っ黒写真云々と首をかしげていた張本人が、よくもまあ狐につままれたような顔で恥ずかしげもなく「なんなんだこれは」なんて言えたものだ。