初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~

 
両方のカメラで撮影が行われるので、たとえどちらかのカメラに不具合が生じた場合でも、もう一方でカバーできるのが、父に代替わりしてからのうちの強み。

今回はテーブルの上に置かれたアナログカメラのお腹がカパッと開き、その横でネガもぐったりと伸びているので、例の〝真っ黒写真〟はアナログカメラのほうで生じた不具合だったということらしい。

が。


「レンズカバーは外したか?」

「……あ、ああぁぁぁっ!!」


父のその、なんともマヌケな大絶叫により、わたしの中学生活は突然暗礁に乗り上げることになる。

次の日の学校――。


「なぁ百ノ瀬。昨日、俺の兄貴から聞いたんだけど、お前の親父、レンズカバーも外さないで写真撮ったらしいじゃん? そんな抜けててカメラマンって言えんの? マジうけるわー」

「くっ……それはアナログのほうで、デジタルは大丈夫だったもん!」

「いやいや、そういう問題じゃねえよ。マジで」

「……」


登校するなりクラスメイトのとある男子生徒に呼び止められたわたしは、早々に攻撃ならぬ〝口撃〟を受けることになってしまったのだ。