「いつもどおり撮ったんじゃろ?」
「そうだ。メンテナンスもしっかりやったし、そのときにはこんな不調なんて……」
「うーむ……」
写真について父と話し合えるのは、つい数年前まで自らも撮影に出向いていたおじいちゃんだけだ。
そのおじいちゃんをも唸らせるとは、いったいカメラになにが起きたんだろう。
父とおじいちゃんから発せられる不穏な空気に、
「心霊写真が撮れちゃったりしたのかしらね?」
「マジやめてよ、わたし、そういうのめっちゃ苦手だってお母さんだって知ってるでしょ」
とコソコソ言い合っていた母とわたしの間に流れる空気も徐々に浸食されていく。
「フィルムは?」
「新品」
「カメラの充電は?」
「満タンだった」
その間も父とおじいちゃんの原因解明会議は続き、〝真っ黒写真〟の原因として考えられる可能性をひとつひとつ打ち消していく。
百ノ瀬写真館では、父に代替わりしたときからデジタルカメラとアナログカメラの2台でもって、依頼を頂いたときは撮影に出向いている。
父とおじいちゃんの会話の中では、デジタルカメラのみの用語もアナログカメラのみの用語も一緒になっているけれど、フィルムはアナログで、充電はデジタルだ。


