結婚式の日取りのことは、おそらく実結先輩が前にここに来たときに直接聞いていたんだろう。
だからこそ今日は特に先輩のことが気になって、どうにも様子がおかしかったんだ。
普段は彼自身の事情もあって話題にしないコンクールのことを執拗に吹っかけてきたのだって、どうにかして気を紛らわせようとして……。
そうだよね、好きな人が誰を好きかくらい、百井くんが一番よくわかっているはずだよね。
実結先輩は持田先生が好きなんだもんね。
好きな人が自分ではない人と結ばれてしまったこんな日だもの、つらい思いをしている実結先輩のことを思うと、気が気じゃなくなったって不思議じゃない。
「ごめん、オレ、今日は変だ」
「わたしも変だったし、いいよ」
お互いに目を見合わせて、どちらからともなく苦笑する。
百井くんの様子がいつもと違った理由がすとんと胸に落ちたとたん、さっきまで胸の中をぐるぐると渦巻いていた卑屈な気持ちがすーっと引いていく、なんていうのは、普通に考えて、あまりあることではないかもしれない。
でも、適わないなって思ったら妙に気分が落ち着いてきたのも事実で。百井くんの困り顔を見ているうちに、今ならどうして人物写真は撮りたくないのかを話せるような気がしてくるのもまた、うそではなかった。


