いやだいやだ、どうしてわたし、こんなに可愛くないの。
自分からますます険悪な空気にしていっているのは重々わかっているのに、なんでわざわざ百井くんの気分を悪くさせちゃうほうに舵を切っちゃうかな、わたし……。
わたしが勝手に自分の地雷を踏みまくっていることも相まって、今すぐこの場から逃げ出したい衝動に駆られる。
「……悪いニナ。今日、持田の結婚式」
すると、百井くんが観念したようにそう言った。
しっかりと鞄を胸の前に抱いて本当に逃げ出す体制に入っていたところだったので、わたしはその思いがけない告白に、逃げ出す寸前の格好で固まってしまう。
「……え、今日……だったんだ」
「式場とか相手の都合もあったらしい。普通に学校がある日だけど、どうしても今日じゃないと都合がつかなかったって聞いた」
「そっか。今頃は二次会の準備かな」
「……そうかもな」
「……」
だから百井くん、今日はいつもと様子が違ったんだ。
心ここにあらずな感じだったのも、いつにも増して切なげだったのも、全部、今日が持田先生の結婚式だから……。


