初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~

 
「ごめん、変なこと聞いたね」

「いや、べつに。そういうニナは、なんで写真撮らないわけ。物とか風景は普通に撮るくせに、人物だけ撮らないのって、なんか納得いかないんだけど」

「くせに、って……。でもまあ、実際そうなんだけど、わたしにはわたしなりの事情があるの。コンクールはどんな写真を出したっていいんだし、やる気のあるなしじゃないよ。それに、人物写真を撮らなかったからって、百井くんに迷惑がかかるわけでもないでしょ? だったら、べつにいいじゃない」

「おま……。なんでそんなに可愛くないんだよ。コンクールは普通に頑張れよ。オレのぶんまでとは言わないけど、せっかく出せるんだ、賞だって狙えるのに」

「……そうだけどさぁ」


なんだよ百井くんめ。

自分のことは話せる部分しか話さないくせに、わたしには全部話してみろって言うの?

確かに百井くんはコンクールに出たくても出られない身の上だし、出るからには頑張れって応援したくなる気持ちも、わからないわけじゃない。

でも、出たくないのに頑張れとか、あんまり言わないでよ。

見る人が見たらわかってしまうような〝百ノ瀬〟の名前を背負ってコンクールに出すなんて、わたしの精神力は到底できるわけがないんだから。