でもあの日、生徒玄関で偶然聞いてしまったときに、先生に『合わせる顔がない』とも実結先輩に話していたことを考えると、単に恨みつらみで出演を辞退したというわけでもなさそうな感じがするんだけど。
「……意地張ってるのとも、ちょっと違う」
すると百井くんが、どこか心ここにあらずといった感じで窓の外に目を向けた。
その横顔にはどことなく切なさが滲んでいて、なんだか見ているわたしのほうまで胸が苦しくなる。
美術部関係の話は、いつもしている他愛ない話とは違って、百井くんの気持ちをうかがい知ることができる重要な機会であり、同時に重いものだ。
わたしも百井くんと同じように窓の外に目を向けながら、「……どういうふうに、って聞いてもいい?」と、いつの間にか自然と慎重な聞き方になっていた。
「ただ申し訳ないだけ。持田のヤツ、意外といいヤツで。1年の頃からずっと気にかけてもらってたのに、あんなことして裏切ったから。だから出られなかっただけ」
「そっか……」
「それ以外に理由なんてあるかよ」
「……うん。そっか。そうだよね、きっと」
ああ、またはぐらかされちゃった……。


