初恋パレット。~キミとわたしの恋の色~

 
これであの話は終わったと思っていたのに、どうして今、百井くんはそれを引き合いに出してくるんだろう。

百井くんに事情があるように、わたしにだって事情があるんだ、デリケートな問題なんだから、お願いだからそっとしておいてほしい……。


「ねえ、それより、持田先生の結婚祝いのビデオレター、百井くんだけ出なかったってほんと? たまたま廊下で実結先輩に会ったときに聞いたよ? どうしてさ?」

「お。なんてわかりやすいはぐらかし方」

「揚げ足取らないでよ。百井くんこそ、はぐらかしてるじゃん。コンクールに出さないことと、ここで活動するって条件付きだけど、先生にはちゃんと許してもらえてるんでしょ? だったらなんで、おめでたいときなのに、そんな意地張るの」


はぐらかすのはお互い様だ。

それよりも、結婚祝いのビデオレターにも出ないなんて百井くんはいったいどういうつもりなんだろうと、実結先輩に話を聞いてから、とても気になっていた。

もしかして、処分があんまり厳しかったから、持田先生に恨みを持っている……とか?