出展する気がないどころか、どうやったら出展しないで済むかを考えてしまうわたしに、百井くんから目を逸らさない理由なんてない。
「その反応はマジでなにも考えてないな。写真上手いのになんでそんなにやる気ないんだよ。オレはもうコンクールとか無理なのに、頑張れるヤツが頑張ってくんないと、面白くないんだけど」
「……それは、そうだろうけど……」
桃のキーホルダーにはしゃぐわたしを見ていたときと違い、明らかに呆れを全面に押し出して強くため息をついた百井くんに、あとの言葉が続かない。
実結先輩が美術室を訪ねてきてから数日して、百井くんから少し教えてもらったことがある。
今後一切、絵画コンクールに作品を出さない代わりに、美術部員として部に籍を置かせてもらい、活動場所を限定することで絵を描き続けることを許してもらえた――そんな内容の話だ。
実結先輩の登場によって、百井くん自身もある程度は事情を話すべきだと考えたのだろう。
百井くんの口から聞いた話は、実際にはあの日、美術部のご一行様が話していた内容とほとんど変わらなかった。
それでもやっぱり、直接話してもらえたことがうれしくて、わたしはそのとき、ただ「……うん」とだけ相づちを打って、それ以上は深く追及しなかった。


