百井くんが都合よくわたしを好きになってくれることなんて、きっと万に一つもあり得ないのに。
わたしだってそれをわかって、友だちとしてつき合っていくって決めたのに、なんでこう、いちいち胸が騒がしくなっちゃうかな。
だって百井くんは――。
「てかニナ、コンクールの写真、真面目にやってるか」
すると、そこまで考えかけて、ふと現実に引き戻された。
いつの間にかうつむけてしまっていた顔を上げると、こちらをじっとうかがっている百井くんとイーゼル越しに目が合い、とっさに逸らす。
百井くんの一言で余計なことを思い出してしまった。
わたしたちの地域では、文化部系のコンクールは11月に行われる。
百井くんが所属する美術部も、わたしが入っている写真部も、コンクールは同時期。
今はまだ6月だけれど、この前、久しぶりに写真部に顔を出したときに部長や副部長がもう相談をはじめていたように、全部を出し尽くした作品を出展するとなると、早く取りかかるに越したことはない。
そういえば、わたしも部員の端くれだし、コンクールの写真撮らなきゃいけないなぁ。
わたしだけ出さないってダメかな。
やっぱり無理だろうなぁ……。


