でも、多希は唇を離して、それ以上のことはしなかった。

真っ赤になって茫然としている私の頭を撫でて、『がっつかない。花珠が大事だから』って微笑んで。


悔しいくらい大人で、やさしい。


けど、


「それに俺、楽しみは後にとっておくタイプだから」


って、浮かべたのは、あのおなじみのカラリとした笑顔だった。


もう、ほんとにかなわないな。