「だれだよーコイツ連れてきたのー」

「だって連れていけってしつこいんだもん」

「花珠(かず)せんせー!私こんなヤンキーと一緒じゃやだぁ」



「だーれがヤンキーだっ」



頭上からの叱り声に飛び上がってキャーキャー言いながら、子どもたちが私の周りまで逃げてきた。



「せんせーこわいよぉ。追い返してっ」

「出てけ不良!先生はお前なんかに勉強教えてやらないんだぞ!」

「そーだっ。花珠先生は私たち小学生にだけ教えてくれるんだからっ」




「えー…っと」




子どもたちにぐいぐいひっぱられてずり落ちたTシャツをなおしながら、私は言葉を探した。


「えーと…、キミ、勉強を教えてもらいたいの?」

「そそ」

「キミ…、高校生でしょ?…小学生ってことはないよね…?」

「あたりまえでしょ。俺は高校生。三年生。ジュケンセーってやつ」




通称「ホスト育成校」のS高生か…「ヤンキー楽園」N工業生か…。


どっちにしたって受験生を名乗るような高校生にはまったく見えない。

形がいい目とニッと笑う口元からも、明るい印象は受けても、勉強が好きそうとはお世辞にも言えなかった。

むしろ、今時のカワイイ女の子にモテモテで毎日遊びまわって、勉強とはまったく無縁って感じ…。



うう。



…苦手だな、こういう男のコ…。