｢...伊月｣


二人が出ていって暫くして、仁太くんが僕を呼んだ。


｢何...？｣

｢...悩んでんのか｣

｢えっ...？｣

｢カモに、嘘ついてること｣

｢そ、れは...｣

｢...わりぃ。追い詰めたみたいで｣

｢そんなこと、ないよ｣


いつもより静かで、真面目な声。
僕は仁太くんが落ち込んでいるように感じて、励ます言葉を探しながら話した。


｢...なんとなくさ、お前の気持ち、分かる気がする｣

｢分かる...って？｣

｢...カモって本当、お前のためにいつも必死っつーか。お前のこと、よく分かってんなって思う。それに、お前が本当のこと言ったら、確かにすっげぇ心配しそう｣


仁太くんの言葉は、僕の気持ちとリンクしているところがあった。
カモちゃんは、僕のために頑張ってくれてる。


｢...アイツ、いいヤツだよな｣


その目が、なんとなくいつもと違う気がした。
紘ちゃんや玲に見せる表情より、ずっと優しくて、温かくて。


｢でも、アイツなら受け止めてくれると思う｣

｢...なんでそう思うの...？｣

｢なんでって...｣

｢好き、だから...？｣


もしそうだったらどうしよう。
もしそうだったら...僕は...カモちゃんは...。


｢...あぁ。好きだよ｣