「裏切られた...?」

「あぁ」


まるで、平気みたいな言い方。


「...聞く?俺の昔話。つっても、そんな昔じゃねぇけど」

「...うん」


僕がそう返事をすると、仁太くんは一つ息を吐いて、話始めた。


「...俺さ、ちょっと前までダチを作ることになんの抵抗もなかった。お互いがお互いを信じて、守ろうって考えて、喧嘩だって、お互いの絆が深まっていくみたいで、楽しんでた」


そこまで話した仁太くんの表情は、懐かしむような優しい表情だった。
だけど、その表情はすぐに険しくなった。


「...けど、ある日、他校と喧嘩をする日が来てさ。その高校は強いってまあまあ有名で、俺らはそこに喧嘩を吹っ掛けられたから乗った。それで、高校の校庭に、ダチと向かった。校庭には、鉄パイプを持った何十人もの奴ら。俺はいつも通り、仲間と目を合わせて、タイミングを見計らってた。でも...」


仁太くんは苛立ったように話す。


「そいつらが俺と目を合わすことはなくて、俺を相手の方に思い切り突き飛ばして、こう言ったんだ。『お前らの相手はコイツがするから、好きなだけ可愛がってやってください』ってな」

「そんなの...」

「...そう言い残して、そいつらは走って逃げて行った。俺はそいつらを追いかけようとした。でも、背後から鉄パイプで殴られて、俺は地面に叩きつけられた。幸い気を失うことはなくて、俺は立ち上がって相手を殴り倒した。ただ、ダチにイラついて。それから俺はふらつきながら自分の高校に戻った。ダチに事情を聞くために教室に入ろうとしたとき、会話が聞こえたんだ。『仁太は、強い。仲間にいれたのは、それだけが理由なんだから、使わねぇと勿体ねぇだろ、そんな道具』って言葉がな」

「道具って...」

「なんだよ、それ」


玲や絋ちゃん達も、その話に驚いている。


「...俺、マジでイラついて、教室に入った。あの時のアイツらの顔、忘れらんねぇよ。俺を見た瞬間、作り笑顔を張り付けて、『無事でよかった』、なんて機嫌をとろうとすんだからさ。俺はそいつらを思いっきり殴った。そいつらが気を失うくらい、何発も。それから、俺は自分より弱いヤツを嫌うようになった。自分を、道具として使ってるような気がして」