そこには、仁太くんがいた。


「仁太、くん...」

「...何大人しく殴られようとしてんだよ」

「ご、ごめ...」

「カモって女がいなきゃ、実力が出せねーのは分かってる。けど、お前がやられたら、この高校自体負けたことになるだろーが」


仁太くんは怒ってる。
僕が悪いのは分かってるけど、僕が今出来ることは、謝ることだけ。


「ごめん...」

「もう聞き飽きたんだよ、お前の謝罪」

「...ごめん...っ」


その時、また相手が殴りかかってくる。
仁太くんがその相手をしているうちに、僕は逃げた。


「おいっ!伊月!」


仁太くんの怒鳴り声を背に、僕は全力で走った。
逃げるしかない。
逃げなきゃ、カモちゃんにバレる。

カモちゃんにバレたら...僕は、独りぼっちになる。