寂しがりヒーロー

呻き声、殴る音。
僕の聴覚を刺激する。

砂埃、辛そうな表情。
僕の視覚を刺激する。

...だけど、今はそれに嫌悪感を抱くことはない。

仲間は生き生きしているし、僕だって...。
僕だって、今はこの感覚が嫌いじゃない。


｢んー、今僕を助けられる人はいないんだよなー。...頑張らなきゃ｣


僕はそう言って、相手のトップと目を合わせる。


｢...さぁ、そろそろやりましょうか｣


僕がそう言って微笑むと、相手は挑戦的な目で僕を見た。

そして、拳を握り、僕へと思い切り向けてきた。
僕はそれをかわし、後ろから蹴りを入れる。
その蹴りは相手の背中に当たり、相手はふらつく。


｢そんな簡単にふらついてちゃ、全然ダメじゃないですか｣


僕の言葉は、相手の癇に障ったらしい。


｢んだと！？｣


彼はそう言ってまた僕に殴りかかる。


｢...同じことを繰り返したって、意味がないですよ｣


僕はまたそれをかわし、彼は何度も僕に殴りかかる。
確かに新岸高校のトップや多義高校のトップより動きは早い。
それでも、やっぱり遅いと思う。
現に僕は何度もかわし、何度も彼を殴っていた。


｢...っはぁ、はぁ｣


相手はかなり疲れてきたようで、息を切らしている。


｢...大丈夫ですか？そろそろ止めません？｣

｢...っ、何言ってんだよ...まだだ...まだ...｣

｢...諦めが悪い人は嫌われますよ？｣


僕はそう言って、フラフラとよろめく彼を蹴り落とした。

彼は｢うっ｣と呻き声を上げ、そのまま崩れ落ちた。