「ほら、朝だよー。起きてよ、伊月」


まだぼんやりする頭。
でも、聞きなれたこの声を、僕が聞き逃すはずがない。


「んー...やだ。眠い~...」

「だーめ。ほら、学校遅刻しちゃうでしょ?」

「うー...カモちゃんの意地悪っ!」

「はいはい、分かったから起きて」


僕の小さな反撃をいとも簡単にかわし、カモちゃんこと、神田望波(カンダモナミ)は僕の制服を用意した。

カモちゃんっていうのは、僕がつけたアダ名。
騙されやすくて詐欺師の絶好のカモって意味で、カモちゃん。

カモちゃんにアダ名の由来を素直に言ったら怒るから、『苗字の最初の文字と下の名前の最初の文字から取ったんだよー』って言えば、簡単に信じてくれた。

やっぱり、カモちゃんってアダ名、ピッタリだね。

僕は嫌々起き上がる。


「ほらほら、早く制服着て?朝御飯も出来てるよ」

「はぁーい」


やっと着慣れてきた制服は、まだ新しい。
僕もカモちゃんも、まだ高校一年生だから。