「ほら実里ちゃん、いつまでもそんな所に立っていないで、あなたもこっち来なさいな」
「あっ、は、はいッ…」
呼ばれた、美人に名前呼ばれた!
「でね、純也さんにはもう言ったんだけど、幸乃さん、しばらくの間実里をここに置いてもいいかな?」
「えっ!ちょっ、紅音!?」
「紅音ちゃん、それは覚悟の上で言っていることかしら?もしそうじゃないのならあたしは許すことは出来ないわよ」
「…分かってます」
「ほんならええけど、…ここは表のように生易しい世界じゃないんよ、それなりの覚悟を持ってもらわなここではやっていけんの、それでもええんならあたしはこれ以上何にも言わんよ」
「うん、大丈夫」
「ちょ、ちょっと紅音っ…急に何言ってッ…」
「ねぇ実里、一つ聞くけど……家で、何かあったの?」
「っ!!?…な、んで?」
「…分かるよ、だって今日の実里、いつもと違ってた…あんな泣きそうな顔で来られたら、聞かないわけにはいかないと思ったの…」
「……紅音」
わたし、そんなに紅音に心配かける程余裕なくなってたのか…
でも、…
「…もう、無理だよ」
「?…実里っ?」
「こんなこと言ったら、きっと紅音はわたしから離れてく…分かってた、いつか言わなきゃいけない日が来るって、でもやっぱり怖いんだ…もしあの事を言えば、紅音でもわたしから距離を置くじゃないかってッ…」
ギュッとスカートの裾を握った。

