「俺、母親いないじゃん?だから、やっぱり憧れる。
何気ない会話とか、愛されてるなって瞬間見たりすると」

「秋人…」

「俺はもう家族の愛情ってモノを貰えないからさ」

「じゃあ、私があげるから!」

「……え?」


秋人はポカンとした表情で、私を見ている。



「私が家族になるから!だから、そうしたら愛情とか感じられるでしょ?」


大きく目を見開いた後、秋人は視線を泳がせると顔を赤くしながら口元を手で覆った。
それから、ちらっと私を横目に見ると呟く。



「……愛ちゃん、わかってる?」

「何が」

「それって、めっちゃプロポーズなんですけど」

「は」

「家族、って…夫婦って事じゃないの?」

「……」



自分の言った言葉を頭で反芻しながら、やっと私はとんでもない事を言ってしまった事に気付いた。


いや、だって、秋人が寂しそうだったからそれを解消出来るならって。
深い意味なんて決してなくって、秋人をただ喜ばせたくて。


顔が熱い。
今、きっと私の顔は真っ赤だろう。