小学4年生の夏。
セミが声を鳴らし始めた初夏。
ランドセルと背中にじんわりと汗をかいて、黄色いヘルメットからは汗の匂いしかしなかった。
毎日持ち歩く小さな小さな水筒も、すっからかんにして片道2キロ、毎日通った。
坂の上の小さな一戸建ての我が家は、猫の住処、溜まり場でもあった。
あの日も、家に着いたらなにをしようか、なんのアイスが冷凍庫に眠っているのか。そんなことしか頭にない10歳の私。
その日家に帰ると、私の白い枕の上に、真っ白な小さな綿毛がちょこんと座っていた。
小さすぎるそね綿毛は、小さな耳をこちらに向けた後、首を回してこちらを見た。
よく近所で見かける綿毛、いや、子猫だった。