天然×鈍感

「…貴女、気づいてたの?彼がもう死んでしまってるって」

彼女は、涙を止めずに、驚いた表情で、あたしを見つめる。

こくりとあたしはゆっくり頷く。

だって彼女の制服は、今のこの学校の制服じゃない。

前のこの学校の制服。

それに、今も握っているんじゃない。

彼女も、死んでしまっているから、透けてそっと包み込んでいるような形。

「あなたは、自分も彼も死んでいるって認めたくなかったんでしょう?だから、待ち続けた。約束したこの大樹の下で」

そう言って、あたしは彼女を抱き締めた。

彼女の方がもちろん背が高いから、抱きつくって感じになったけど。

「…あっ……りが…と…あり…が…と、死ん…でるって…言ってくれ…て、認…め…てく…れて、話…しか…けてく…れて」

あたしの上で何度もお礼を言う。

そっと、彼女を離す。

笑顔で、両手を強く握る。

「天国の彼に好きって伝えておいで!」

「えぇ、あり…がとう」

そういうと、涙を手の甲で拭きながら、消えていった。

最後に可愛らしい笑顔を浮かべて。