クラス替え

ズラリと並ぶ名前。

男男女男女女女…

注意深く、指とともに名前を追っていく。そうしないと見失ってしまいそうだった。
友達とクラスの分かれた子、好きな子と一緒になれた子、自分のクラスさえ知れたらあとは興味を示さない子…色んな子がいる。

一体自分はどこにいる?

一向に見つからない。
「美帆っ!おんなじクラスだよ、やったねっ!」
急に後ろから肩を掴まれた。びっくりして肩を窄めたが、私はすぐに後ろを向いた。やっぱり…予想通りの顔がニコニコと眩しい笑顔を向けている。
「あのねぇ、友梨香。クラス替えって一年間の楽しみなんだよ?私にも見つけさせてよぉ!」
「でも美帆ってばずっと自分の名前スルーしてるよ?正直怪しい。」
…そ、そうなのかー。
でも言われてみると確かに同じクラスを三周くらい見ている気がする。
「何々?また幽霊?」
「いやいやいやっ!今更幽霊見ても何も思わないよぉっ!」
確かにそこに居ることは事実なんだけどね…
「美帆はぁ、二組っ!一組じゃないよぉ~」
友梨香はニコニコと、ただただ純粋な気持ちで私に教えてくれている。それが分かってしまうから、私は彼女を憎めないのだ。
「美帆ぉ~春休み終わったからって暗すぎない?」
暗い、のか…
でもここで暗くなちゃったら余計友梨香に言われちゃうっ!
「ごめんね、友梨香。教室、行こっか!」
友梨香は優しいから、何事もなかったかのように頷いた。友梨香は私の手を引いて歩き出した。

その、一歩を踏み出したとき。

聞こえた。

「…待ってる。」
自分の耳を疑った。今、確かに待ってるって声がした。はっきりと聞こえた。
…どういうこと?
「屋上で。」
え?屋上って鍵があるのに?
「屋上に鍵なんてない。鍵があるのは屋内だけ。」
何が言いたいのか分からない…不思議。
「簡単だよ、美帆さんなら。屋上への階段を上がれば良いだけだからね。」
優しい言い方…
って私ってば何を…今、明らかに私の心の中と誰かの声が会話をしていた。…怪奇現象?今までの幽霊とは何か違う…
幽霊は透けてて、耳に届く。でもいまのは…こう、直接頭にくるって感じ。
怪しい。

…子どもの頃からミエナイモノがミエル私に言われたくないか。

「美帆ぉ?まーた暗いぞーっ!」
友梨香は、私の頬をプニーッと引っ張って笑顔を作った。この顔、顔面の筋肉が辛くなるから苦手なんだけど…ま、友梨香ならいっか。
「ありがとう、友梨香…」
友梨香のお陰で、私は少しだけ居場所を感じられた。

「滅べば良いのに…所詮友情って上辺だろ?くだらない。」

優しさの奪われた声に、私は眉根を潜めた。
私の居場所を否定された。

イライラした。

友梨香は、私の居場所だっ!