ほっと胸を撫で下ろしながら黒板の横の壁に掛かってある時計を見ると、それはもう体育館へ移動しなければいけない時間になっていた。
盛り上がりながらリップをつける彼女たちに声を掛け、私たちは教室を出た。
「ねえ聞いて!
あたしさっきさぁ蔵元(くらもと)さん、校門の前で見かけたんだよね」
「えー! うそっ! 来たんだ!?」
「見かけによらず神経ずぶとーい」
体育館へ移動する途中、友達は"蔵元さん"の話題で持ちきり。
一方、このグループのリーダーでもある美香ちゃんは、視線を一度横に向けたものの興味ないといった感じでスマホを弄っていた。
私はみんなより一歩引いて、窓の向こうに広がる青い空を見ながらのんびりと歩いていた。
「ねー思わない?月も!」
「…え、なにが?」
「だぁーから、蔵元さんってば人の彼氏は横取りするし、月のことは裏切るし、ほんっと最低な性格だよねーって!」
月も嫌いでしょ、あんな子。
"蔵元さん"はみんなの嫌われ者で、一学期の頃は大半の女子から無視されていた。
彼女は無視されていることに戸惑う様子もなく、一学期は一度も学校を休まなかった。

