「全然おかしくないよ……! それほど好きだったんでしょ? わたしは杏子を応援する!」
好きな人に、他に好きな人がいるツラさはよくわかる。
ツラくて苦しくて、胸が締め付けられて仕方ないってことも。
どうしたらいいかわからなくて、身動きが出来ずにいるもどかしさも。
涙が溢れて止まらなくなる切なさも全部。
全部が杏子と重なる。
今までどれくらい泣いた?
苦しかった?
付き合っていた分、たくさんの思い出があるから杏子の方がツラいはずで。
杏子の気持ちを考えると、わたしまで涙が溢れて来た。
「もー、花梨までなんで泣いてるの? でも、ありがとう……」
杏子は涙を拭いながらわたしを見て苦笑いを浮かべる。
「だ、だって〜……! あ、杏子が……っ」
「あたしのために……泣かせてごめんね」
大きくブンブン首を振る。
やめてよ。
そんな風に謝る必要ないのに。
いつもの杏子らしくないじゃん。
もっと強気で言いたいことをズバッと言っていいんだよ?
わたしは、その方が好きだもん。
だから……そんな苦しそうな顔をしないでよ。



