俺の方が、好きだけど。



もしかして、思い出したくないことを思い出させちゃった……?


他に好きな人が出来たなんて、わたしだったらそんなのツラすぎる。


耐えられないよ。



「ごめんね……嫌なこと思い出させて」



何も知らずに聞いてしまったことを、心から後悔した。


誰にだって言いたくないことのひとつやふたつくらいはあって当然なのに。


それを掘り返すようなことをしてしまった。


そんな事情があったなんて、全然知らなかったよ。



「なに暗くなってんの? 気にしてないから、そんな顔しないでよ! 今まで黙っててごめんね……なんだか言い出しにくくてさぁ」



「ううん! わたしこそ杏子の気持ちも知らずに……ごめんね」