そのあとも、わたし達は屋上でぼんやりしていた。
杏子といると、ホッとする。
授業開始のチャイムが鳴っても、杏子は「戻ろう」とは言わなかった。
きっと、傷付いてるわたしを励ますために一緒にいてくれてるんだ。
杏子……ありがとう。
大好きだよ。
「杏子は好きな人いないの?」
気になったから聞いてみた。
タイプは年上の人らしいけど、はっきりとは聞いたことがなかったから。
「なに? いきなり」
「いやー、だってさ……杏子のそういう話って聞いたことないから。中学の時、彼氏とかいなかったの?」
わたし達は高校からの仲だから、中学時代のことは詳しく知らない。
今まで何度か同じ質問をして来たけど、はぐらかされてばかりだった。
だから過去に何かあったんだとは思うけど、未だにそれは教えてくれない。



