うちの高校の屋上の鍵は開いている。
その代わりフェンスが高々と立ててあって、これを乗り越えるのは至難の技。
なので、今まで危険なことをする人はいなかったらしい。
ーーギーッ
屋上の扉を開けると、目の前に広がるのは快晴の空。
春の穏やかなポカポカ陽気がとても気持ち良かった。
だけどわたしの心は晴れなくて黒い影を落としたまま。
さっきの高野くんの嬉しそうな顔が、頭に焼き付いて離れない。
ガマンしたはずの涙が再びじわじわ溢れて来る。
杏子はわたしの手を引いて外に出ると、フェンスの前まで行きわたしを下へ座らせた。
その横に杏子も座る。
「で、何があったの?」
「う、うん……っ、あのね……」
わたしは遊園地に行った日のことから、さっきのことを話した。
胸が痛くて、苦しくて。
涙がポロポロこぼれる度にそれを手で拭った。
この涙と一緒に高野くんへの気持ちも流れてくれたら、どんなに良かったかな。
優しい高野くん。
みんなの憧れで、高野くんがいる場所はいつもキラキラ輝いてた。
カッコ良くて、明るい高野くんが大好きでした。



