「ど、どこ行くの?」
教室を出てどこかに向かって進む杏子に問いかける。
「屋上」
「なんでいきなり」
「いいから!」
杏子は好きな物は好き、嫌いな物は嫌いとはっきりしてる。
中途半端や曲がったことが大嫌いで、誠実でまっすぐな子。
苦手な人にはニコリともしないし、親しくない人と必要以上に話そうとしないから周りからは『冷たい』とか『怖い』なんて言われていて。
愛想を振りまかないタイプだって知ってるわたしはそうは思わないけど、杏子の優しさはいつも伝わり難い。
言葉にしない分、余計に。
だけど、間違いなく杏子は優しい。
今だって、話を聞いてくれようとしてるんだよね?
それが、杏子の優しさ。



