これって……壁ドンってやつだよね。



満員電車の中では仕方ないのかもしれないけど、何もないところでこんなことをされたら恥ずかしくて倒れちゃいそう。


ううん、今もすでに倒れそうなんだけど。



目的の駅に着くまでの間、視線をどこにやればいいのかわからなくて。


規則正しく上下に動く、男らしいキヨ君の出っ張った喉仏を見つめていた。



「疲れた? 大丈夫?」



電車を降りた後、キヨ君が心配そうにわたしに聞いて来た。



「ううん、キヨ君が盾になってくれたから大丈夫だよ。ありがとう」



「そっか。良かった」



きっとキヨ君の方が疲れたはずなのに、そんな風に聞いて来てくれるその優しさが嬉しかった。