そこまで背が高くないわたしは、人の波に呑まれてぎゅうぎゅう押し潰される。


土曜日だというのに、朝が早いせいか周りにはスーツを着たサラリーマンが多かった。



「花梨ちゃん、大丈夫?」



キヨ君が心配そうにわたしの顔を覗き込む。



「う、うん。なんとか」



今のところ潰れずに済んでる。


だけど、息苦しいよ。


人に酔いそう。



「こっち来いよ」



キヨ君がわたしを気遣って、ドアのところに立たせてくれた。


そしてドアの横に腕をついて、人ゴミから遮断するようにわたしを閉じ込める。



血管が浮き出た男らしくてしなやかな腕と、目の前に見える出っ張った喉仏。


シャツの隙間から覗く首筋から鎖骨のラインがあまりにも綺麗で。


ド、ドキドキしすぎて落ち着かないよ。



さらには、電車がカーブを曲がって揺れる度にキヨ君の体がわたしの体に触れて。


キヨ君は何回も『ごめん』って申し訳なさそうに謝ってくれたけど、わたしはフルフルと小さく首を横に振ることしか出来なかった。