とりあえずよかったとホッと息をつく。
何もなさそうに見えても、みんなキヨ君のように悩んでいたりするのかな。
高野くんも……わたしが知らないだけで本当は色々あるのかも。
もしかすると、悩みがない人の方が少ないのかもしれない。
「俺のことを優しいって言ったけどさ、花梨ちゃんの方が十分優しいし」
「え? わたし? そんなことないよ」
「いやいや、今まで素で『優しい』なんて言われたの初めてだし。海斗とかには、腹黒王子って呼ばれてるんだよね」
は、腹黒王子?
からかうように笑うキヨ君の顔が頭に浮かんで、妙に納得してしまった。
意外と当たってる?
「それにさ、今までこんな風に普通に接してくれた女の子は初めてだから」
はにかむキヨ君。
「わたしも男の子の友達ってキヨ君が初めてかも! 今まで男子と関わることってなかったし」
今でも高野くんや慣れていない人の前では、緊張しちゃってうまく話せない。
男子の中でこんなに心穏やかに話せるのは、キヨ君が初めてかもしれない。