俺の方が、好きだけど。



それから十分が経った。


高野くんが出てくるどころか、誰の気配もない。


もしかして……帰っちゃった、とか?


緊張とパニックで考えられなかったけど、その場で手紙を読まない可能性だってあるわけだ。


帰ってから読んで気づくパターンだってありえるのに、わたしはいっぱいいっぱいで自分のことしか考えられなかった。


「はぁ……」


なぁんだ。


いつの間にか両手を胸の前で握っていたわたし。


ギューッと力がこもって、息をするのも忘れてしまいそうなほど。


どれだけ緊張してたんだろう。


肩の力が抜けて放心してしまう。


とりあえず、靴箱を覗けば高野くんが帰ったかどうかがわかるはず。


よし、それだけ確認してから帰ろう。


あとのことは、また明日考えればいいよね。


そう思って体育館裏から再び昇降口へと移動した。


二組の靴箱の前まできた時、階段からバタバタと下りてくる足音が聞こえて動きが止まる。


そしてとっさに柱の影に身を隠した。


「お前、マジでおせーんだよ!」


「わりーわりー!」


「せっかく早く帰れる日に限って、呼び出されるんだもんな」