俺の方が、好きだけど。



先生が教室を出て行くと、女子からの視線がたちまちわたしに向けられた。


みんなの目が『キヨ君には似合わない』って言っている。


そんなの……自分でもわかってるよ。


キヨ君はただ、助けてくれただけなんだから。


早く誤解をとかなきゃ。



「キヨ君って、鈴峰さんと付き合ってるの?」



キヨ君の前に座っている女子が振り返って、悲しそうな表情でキヨ君に詰め寄る。



「つ、付き合ってないよ……! さっきのは助けてくれただけだから。ね?」



大きな声を出したわたしに、みんなが注目する。


恥ずかしいけど、ちゃんと誤解をとかなきゃ申し訳ない。



「なーんだ。やっぱりそっか。なら良かった!」



「だよね〜! 学校の王子様に彼女がいるなんて、ありえないもん」


みんなが口々に声を上げる。



「さっきはありがとう」



そんな中、わたしは改めてキヨ君にお礼を言った。


キヨ君は、優しい人だね。



「いえいえ。昨日のお詫び」



キヨ君は、頬をポリッと掻きながら申し訳なさそうに目を伏せた。



「お詫び?」



「昨日、嫌な思いをさせちゃったから。それに振り返って見てたのは俺の方だし、花梨ちゃんが怒られる理由はないじゃん」



昨日……。


手紙のこと、気にしてくれてたんだ?


そんな風に見えなかったのに。