わたしは最後にもう一度だけ辺りを確認すると、高野くんの少し汚れたスニーカーの上に手紙を置いた。
心臓がバクバクいってて、左手でギュッとそこを押さえる。
足の力が抜けそうになるのを、必死に踏ん張って体を支えた。
い、入れた!
手紙を……高野君の靴箱に入れてしまった。
これで後は高野くんが体育館裏にきてくれるのを待つだけ。
そこで改めて気持ちを伝える。
体育館裏に移動して、待ち人を待った。
四月下旬、時折冷たい風が吹き、木々の葉っぱがザワザワ揺れる。
その光景をぼんやり見つめていると、胸のドキドキが少し落ち着いてきた。
そして、あれから約一時間は経ったんじゃないだろうか。
「はぁ」
まだ、かな。
遅いな。
さっきから人の声はするけど、こっちに向かって来る足音や気配はない。
部活がないからみんなさっさと帰って行き、次第に校舎がガランとして人気がなくなってきた。
手紙を読んだら来てくれる、よね?
わたしは遠くから顔を覗かせ、校門を出て行く人の中に高野くんの姿を探していた。
緊張から手に汗を握る。
でも、まだ姿は見えない。



