キヨ君が悪いわけじゃない。
謝ってほしいわけでもない。
ほんとにショックだったのは……。
「高野くん……わたしのことを覚えてくれてなかったから」
だから苦しかった。
虚しかった。
みじめだった。
悲しかった。
改めてそう口にすると、またジワッと涙が溢れた。
胸が痛くて張り裂けそうになる。
苦しくてツラいよ。
「あー、あいつバカだからさ……! 人の顔と名前覚えないんだよ。けど、何となく見たことあるって言ってたし、落ち込む必要ないから。な?」
必死にフォローしてくれようとするけど、逆にそれはわたしの心を傷付けるだけだった。
それほどわたしは存在感がなかったってことだよね。
「一年も同じクラスだったのに、そんなことってある? 普通、話したことはなくても顔くらいは覚えてるでしょ」
わたしの代わりに杏子が口を開いた。
軽くうつむいたまま下唇をギュッと噛み締める。