「わかってんのかよ? 花梨ちゃんは巻き込まれたんだぞ?」
キッと鋭くなったキヨ君の目付きに、重苦しい空気が流れる。
「わかって……るよ」
ドアの向こうから弱々しい声が聞こえた。
反省しているのかはわからないけど、声のトーンは明らかに暗い。
それは、今にも泣き出してしまいそうなほど震えていた。
「わかってねーよ! わかってたら、んなところでボサッと突っ立ってるはずねーだろ!」
キヨ君はわたしのために……声を張り上げて怒ってくれている。
「キヨ、ちょっと落ち着けよ」
「落ち着けるわけねーだろ! 花梨ちゃんがどんな目に遭ったと思ってんだよ!」
グッと握り締めた拳がプルプル震えていた。
そこまで必死になってくれて嬉しいと思う反面、申し訳なさでいっぱいになって行く。
「わかってたら、一番に謝るはずだろ? ボサッと突っ立ってる場合じゃねーんだよ!」
「ううっ……ご、ごめん……なさい」
ドサッと崩れ落ちるような音が聞こえたと同時に、声を押し殺して泣く声が聞こえた。