すすり泣く杏子に、わたしはわけがわからなくて戸惑うばかり。
いったい、なんでわたしが拉致されたってわかったの?
わからなさすぎておかしくなりそう。
それでもわたしは、杏子をなだめるように必死に背中をさすった。
高野くんもキヨ君も、押し黙ったまま杏子を見て何とも言えない顔をしている。
わたしはそんなキヨ君の顔をじっと見つめていた。
「んなところに突っ立ってないで入って来れば?」
キヨ君の視線がスーッと流れて、リビングのドアの方に向けられる。
低い声はどこか冷め切っているようにも聞こえて、何となく雰囲気も怖い。
なに?
まだ誰かいるの……?
「入って来れるわけないか。自分のせいでこうなったんだもんな」
え?
自分のせいでこうなった……?
ってことは、そこにいるのは。