キヨ君は本当にわたしのヒーローだよ。
「あ」
Tシャツに袖を通した時、ふと目に付いた自分の腕。
ガムテープが貼られていたそこには、くっきりと赤い痣が残っていた。
夢じゃなかったんだな。
本当、怖かった。
どこかに落としたのか、持っていた巾着が見当たらない。
スマホとか財布とか貴重品が入っていたのに、どこで落としたのかさえも検討が付かない。
神社かもしれないし、廃ビルかもしれないし。
キヨ君の家に来るまでの道中だったかもしれない。
だけどもう、わたしには引き返す度胸なんてない。
涙色のラブレターも失ってしまった。