ひとりで楽しそうに笑うキヨ君に、クラス中の女子からの視線が集まる。
なんだか敵意を感じるのは、気のせいだろうか。
「あ、大石さんじゃん! おはよう〜!」
キヨ君は無邪気に笑いながら、教室に入って来た大石さんに大きく手を振る。
誰にでもフレンドリーなところは、さすが高野くんの友達なだけはあるよね。
人懐こくて、犬みたいだし。
キヨ君の愛嬌のある笑顔は、きっと誰からも好かれそう。
だけど呪いの手紙のことは、頭の中から抹消して下さい。
どうか忘れて下さい。
「キヨ君、おはよう〜!」
透き通ったような大石さんの声が聞こえて顔を上げると、大きな目を細めて笑う彼女と視線が重なった。
ーードクッ
小さく鼓動が跳ねて、胸の奥の方に鋭い痛みが走る。
大石 寧々(おおいし ねね)ちゃんは今年初めて同じクラスになったけど、わたし達の学年で知らない人はいない。
杏子と同じくらいか、もしくはそれ以上の誰もが認める清楚系の美少女だから。
『アンちゃんと寧々ちゃんの2人が揃ってるなんて、一組の女子ってレベル高くね?』
『他に可愛い女子もいるしな』
新学期初日、男子達が嬉しそうにそう言っているのを聞いてしまった。



