そしてキョロキョロ辺りを見回して、挙動不審なくらい周囲を気にしている。
その行動は明らかに異常なものだった。
だって。
まるで、誰かから逃げているみたいなんだもん。
「ど、どうしたの……?」
「あたしのうしろに誰かいない?」
「え?」
うしろ?
目の前の寧々をじっと見つめる。
当たり前だけど、背後には誰もいない。
「いない、けど」
「違うよ! あたしのうしろっていうのは、通路の奥のこと!」
え?
通路の奥?
それなら最初からそう言ってよ。
通路は一直線になっていて奥まで見渡せる。
細いから人が来たらすぐにわかるけど、今は誰も通っていない。
「いないよ」
わたしがそう言うと、寧々はヘナヘナとその場に座り込んだ。
力が入らないのか、だらんとしている。
何かあったことは聞かなくてもわかった。
「どうしたの?」