俺の方が、好きだけど。



「なんか言いたそうな顔してるね」


キラキラした眩しい笑顔をわたしに向けながら、キヨ君は後ろのドアから教室に入ってくる。


どうして朝からそんなにニコニコできるんだか。


「べつに……なにもないです」


「はは、そう?」


キヨ君は意味深に笑うと、自分の席に向かってスタスタ歩いて行った。


確か名前は……清野 悠大(きよの ゆうだい)って言うんだっけ?


何気なく背中を見ていると、キヨ君はわたしの前の席にカバンを置いた。



キ、キヨ君って……わたしの前の席だったんだ?


知らなかった。


どれだけ周りが見えてなかったんだろう。


わたしの席は窓際の一番後ろ。


カバンだけを置くと、キヨ君はなぜか杏子の席で話すわたし達の元にやって来た。



杏子はそれを見て嫌そうな顔をしている。



「花梨ちゃんとアンちゃん!」



「げっ! なんであたしの名前まで知ってんのよ」



さらに嫌そうに杏子がつぶやく。