バカだよね。
挨拶だけで、こんなに頬が緩むなんて。
わたし、いつからこんなに単純になっちゃったんだろう。
「あたし、職員室に用事があるから花梨と清野は先に教室に行ってて」
え?
あ、杏子?
チラッと見ると、杏子はわたしに向かってウインクをした。
絶対ワザとだ。
本当は用事なんてないくせに〜!
杏子めー!
だけど、もしかしてこれはチャンスなんじゃ。
「花梨ちゃん?」
「へ?」
名前を呼ばれてドキッとする。
「俺も行くところがあるから、じゃあな」
「え……あ。ま、待って……!」
まだ行かないで。
わたしはとっさにキヨ君の腕を掴んだ。