穏やかなキヨ君の声は、わたしがいるせいか少しぎこちなく歯切れも悪い。
やっぱり、わたしは嫌われてるのかな。
悲しくなって、拳をギュッと握る。
「花梨ちゃんも、おはよう」
えっ……?
「お……おは、よう」
キヨ君は靴を脱ぐと、下駄箱から上靴を取り出した。
だけど、その横顔は何だか悲しげ。
茶色のゆるふわパーマに、耳から見える輪っかのピアス。
ゆるく着崩したズボンと、だらしなく結んだネクタイ。
暑いせいか、カッターシャツのボタンがいつもより多く開けられている。
そこから覗く鎖骨にドキッとした。
まさかキヨ君から挨拶してくれるなんて。
予想外の展開に戸惑う。
だけど、すごく嬉しかった。