次の日もその次の日も、キヨ君がわたしの方を振り向くことはなかった。
「キ、キヨ君……この問題教えてほしいな」
「俺なんかより、先生に聞いた方がわかりやすいと思うよ」
「え、でも、キヨ君教え方上手だし」
この前も数学の問題を教えてもらって、すごくわかりやすかった。
「ごめん、他のクラスの友達と約束してるから」
「え? あ、そうなんだ……」
なにかと話題を作ってはキヨ君に話しかけているけれど、返ってくるのはそっけない返事ばかり。
笑ってくれてはいるけど、わたしにはわかる。
キヨ君はわたしを避けてるってこと。
それがものすごく寂しい。
何か話したいのに、なんて言えばいいかわからない。
「それにさ、俺と話してたら海斗にカン違いされるから、あんまり話さない方がいいと思うよ」
「な、なんで突然そんなこと……」
今まで普通に話してたのに。
悲しくて唇をグッと噛み締める。
「ごめん、花梨ちゃん……このままだと、俺がツラいから」
「えっ? どういう、意味?」
キヨ君がツラい?
なんで?
「とにかく、ごめん」
「キ、キヨ君……」
「じゃあ、もう行くから」
呼び止める間もなく、キヨ君は教室をあとにする。
ごめんって言われたって、理由を言ってくれなきゃ全然わかんないよ。
この日を境に、わたしはキヨ君にどう話しかけていいかわからなくなった。
キヨ君の方から声をかけてくることもなくて、からかったり、笑顔を見せてくれることもなくなった。
胸が苦しくて、泣きそう。
「はぁ」
なんだか、最近ため息を吐く回数が増えたな。
放課後の教室が唯一落ち着ける時間帯だ。
誰もいなくなったあと、自分の席で机にうなだれる。
「鈴峰」
え?
突然名前を呼ばれて、勢い良く起き上がる。
た、高野くん……?



