「あ、あの、わたし、何かしたかな？」
キヨ君の背中に向かって声をかける。
すると、再びキヨ君はこっちを向いた。
「別に、花梨ちゃんは何もしてないよ。それより、海斗とうまくいきそうなんだろ？ よかったじゃん」
「……っ」
キヨ君は笑ってそんなことを言った。
よかったなんて、キヨ君にだけは言われたくなかった。
胸が苦しくて張り裂けそう。
うまく息が出来ない。
キヨ君にだけは、カン違いされたくないよ。
「そんなんじゃ……ないよ」
違うよ。
それなのに。
「チャンスだろ？ 頑張って」
それだけ言うと、キヨ君はわたしの返事も聞かずに再び前を向いてしまった。
突き離されたような気がして、それ以上何も言うことが出来ない。
本当は否定だってしたいのに……。
頑張ってって言われたら出来ないじゃん。
キヨ君の……ばか。
