予鈴が鳴って席に着く。
「キ、キヨ君……おはよう」
キヨ君はいつも、わたしが来ると振り返って挨拶をしてくれるんだけど。
なぜか、今日に限っては前を向いたままだった。
だからわたしから声をかけてみる。
気付いてないだけ?
恐る恐る声をかけると、キヨ君はゆっくり振り返った。
「なに?」
いつもはニッコリ笑ってくれるのに、今日はやけに真顔。
言葉にもトゲがあるように感じた。
「え? あ、いや……おはようって言ったんだけど」
「うん、おはよ」
それだけ言うと、キヨ君は前を向いてしまった。
あれ?
なんだか……怒ってる?
でも、なんで?
わたし……何かした?
心当たりがなくて戸惑う。
もしかして……高野くんのことで怒ってるとか?
いやいや。
でも、まさか。
キヨ君が怒る理由なんてないよ。