だけど、体育館裏には高野くんの姿はない。


息が上がって、額からは汗が流れ落ちた。



わたしなんかが行ったところで、どうにかなるような問題じゃないけど。


それでもやっぱり、高野くんのことは放っておけない。



だって、それはやっぱり。


わたしにとって高野くんはすごく特別な人だから。



わたしに恋を教えてくれた特別な人。


今でも好きなのかと聞かれたら、それはわからない。


だけど前みたいに胸が苦しくなったり、涙が溢れてくることはなくなった。


高野くんの幸せを、わたしは心から願ってるんだ。


いつまでも笑ってて欲しい。


そう思うのは、当然のことでしょ?



それからあちこち探し回ったけど、高野くんの姿はどこにもなかった。



もう帰っちゃったのかも。


校舎から離れた焼却炉まで来たところで、足を止めた。



裏庭に植えられたツツジは、見事に全部散っていて。


なんだか、すごく寂しく思えた。