「自分の気持ちと、きちんと向き合いなよ」



杏子はそんな意味深なことを言って席へ戻って行った。


自分の気持ちと向き合いなって。


なにそれ。



だけど、なんとなく言ってることはわかった。



今のわたしは、高野くんよりもキヨ君のことが気になってる。


この前まであんなに好きだったはずなのに、胸の中にいるのはまちがいなくキヨ君で。



わたし……高野くんを忘れてキヨ君を好きになったの?


わからない。



でも、だとしたら変わり身の早さに自分で呆れる。


わたし……こんなに軽い女だったの?


あー!


もう。



「はぁ」



ますます自己嫌悪。



人のことよりも、自分のことが一番良くわからないよ。